玄岳ドライブイン（くろたけドライブイン）は、静岡県田方郡函南町の伊豆スカイライン沿いにあるドライブイン跡。伊豆スカイライン沿い、相模湾やはるか駿河湾まで見渡せる標高700メートルの尾根に位置する。「○岳ドライブイン」「K岳ドライブイン」等として紹介されていることもある。

熱海高原ロープウェイ（熱海サボテン公園ロープウェイ）山頂駅を兼ねる建物として、1967（昭和42）年に開設された。

熱海高原ロープウェイは当時としては世界最大の定員を持つ120人乗り4線交走式ロープウェイで、伊豆スカイラインの玄岳と熱海サボテン公園の間の全長2,678ｍを結んでいた。

山頂駅は1階がロープウェイ駅、2階が300人収容の大レストラン（後に資料館）、3階が機械室等の構成で、駐車場は乗用車1000台大型バス300台が駐車可能だった。

営業当時のパンフレットでは「高原の花をかたどったロープウェイ玄岳駅舎」「椿に似た玄岳駅舎」と紹介されている。入園料は大人200円小人150円で、ロープウェイ運賃は往復大人500円小人250円だった。

熱海サボテン公園は、2つの大型ドーム温室と2棟の建物から成る熱帯植物園で、パンフレットには「入鹿、金シャチ、弁慶柱、ウチワシャボテン、岩石柱など約300種のサボテンが林立し、さながらメキシコの砂漠のような感」と紹介されている。ジャングルレストランなどを備えたいたらしい。

開業からわずか3年たらずの1970（昭和45）年6月6日に母体である「みその商店」が倒産、熱海高原ロープウェイは同月9日から運行中止となった。同年7月1日、熱海高原観光の要請で、債権者の一人である永信物産によってロープウェイとサボテン公園の営業が再開されたが、同年12月には再び停止。玄岳ドライブイン自体は、運行再開に先立ち規模縮小の上で営業を再開しているが、これもまもなく途絶えたらしい。

観光名所の一つとして復活を望む声が大きく、元従業員と市内債権者の協力により1973（昭和48）年5月に発足した執行部が業務を引き継ぎ、同年9月29日、玄岳ドライブインとサボテン公園は営業を再開。しかしロープウェイについては再開されることがなかった。

熱海サボテン公園は「知られざる魅力伊豆」（読売新聞社、1980年）では「約300種のシャボテンが林立、異国ムードがたっぷり。亜熱帯植物円ではバナナ、パイナップルなどが垂れ下がる」と紹介されているが、上ノ山植物公園となった後に廃園し、跡地では星野リゾート・リゾナーレ熱海が営業している。

ゴンドラなどのロープウェイ施設は1983（昭和58）年頃まで放置されていたが、2013（平成25）年までに山麓駅や索道を支持する鉄塔、ゴンドラなどは撤去されている。

玄岳ドライブインその後も営業を続けたが、2005（平成17）年に閉業。2006（平成18）年にNPOに譲渡され「地球環境&エネルギー資料館」として利用されていたが、これも2008（平成20）年11月末に閉館した。

ハットのような形状の昭和レトロでユニークな建築が残り、2019（令和元）年時点で建物一部に「玄岳ドライブイン」の文字が読み取れる。入口は封鎖され管理されているが、外壁に落書きが見られ、また一部窓ガラスが損壊している。

2022（令和4）年時点で、建物は東京の不動産管理の会社によって維持管理され、撮影やサバイバルゲーム、ライブ等への貸し出しや、不定期の見学会が行われている。無許可での立ち入りは厳しく取り締まられている。

建物内にはレストラン跡のほか、標識や制御盤、滑車などのロープウェイ設備が残っている。建物裏側には発着場があったが、コンクリートで塞がれ展望台になっている。

なお、麓の熱海側には、タイムトンネル（全長140m）と呼ばれる熱海サボテン公園と山麓駅を結んでいたトンネルがあり、内部には施設の看板やエレベーター設備の残骸が残っている。

2022（令和4）年8月時点で現存する。