山中湖のタイムマシーン 概要・歴史
屋上に虎の飼われた驚異の博物館
山中湖のタイムマシーンは山梨県南都留郡山中湖村の店舗。山中湖湖畔の国道138号線から入ったところ、セブンイレブン山中湖旭ヶ丘店裏に位置する。
3階建ての中規模建築で、建物自体は1975年時点から確認できる。
2014年時点で階段に蔦が絡まり扉に落書きされており、使用されている形跡が見られない。2019年時点で外壁に経年劣化による剥落や雨染みがあるが、大規模な損壊等はない。
2022年2月時点で現存し、階段が藪に覆われ、剥がれ落ちた外壁が地面に散乱している。2階3階は天井が抜け、また2階室内には竹箒が一つ立てかけられている様子が窺える。2階の出入り口には「TIME MACHINE」の文字、途中の壁には赤い文字の英文が確認できる。
元々は「山中湖サービスセンター」というドライブインのような店舗で、電話帳では1993年に同名の店舗の登録がある。土産店とレストラン、貸倉庫があり、屋上からの展望を売りにしていたという。「サービスセンター」時代の痕跡として、建物正面側の1階と2階の間部分に「お○や○」「株式会社山中湖サービスセンター」「○○ 水晶」の文字、2階と3階の間部分に「お食事」「RESTAURANT」の文字、3階と屋上の間部分に「○休憩」「貸○庫」「○上○望」の文字が残っている。
この「山中湖サービスセンター」については、俳優の水谷豊氏が18歳の頃に家出し、2ヶ月ほど住み込みで働いていたというエピソードがあり、2009年放送のNHKの番組「SONGS」でも紹介されている。水谷豊氏自身が「山中湖サービスセンター」建物の前でロケを行っている様子が、番組を紹介したブログ記事に掲載されている。番組内ではかつての「山中湖サービスセンター」の写真も紹介されているが、現存建物に残る「おみやげ」「RESTAURANT」の文字が当時のものであることが確認できる。また、水谷豊氏の誕生年から逆算すると、1970年時点で既に「山中湖サービスセンター」が営業していたことになる。
一方で扉にある「CONNY」の文字は、1960年代アメリカンポップスのリメイクで1980年代初頭にブレイクしたバンド「ザ・ヴィーナス(THE VENUS)」で1981年から1983年までリードヴォーカルを務めたCONNY LANE (石川幸子)のことらしい。同氏は解散後もCONNY(コニー)名義で音楽活動を続けている。
また、1994年頃に突飛な施設博物館「タイムマシーン」として営業していたことが、個人ブログの記事に記されている。かなり特異な剥製専門家による運営だったらしく、1960年代の玩具やレコード、ヴィンテージギターなどの他、狼や鷲、熊、ヘラジカの剥製が展示され、ロールス・ロイス「クラウド1」を真っ二つに切断したソファーが置かれており、さらに屋上の檻には本物のトラが飼われていたという。ホラーハウスやライブ会場としての機能もあり、深夜2時まで営業していたらしい。外装にはエルビス・プレスリーがティラノサウルスに食べられる意匠が施されていた。
以上より、1970年代前半頃に開業したドライブイン「山中湖サービスセンター」が1993年頃に閉業、その後1994年頃から短期間(一夏のみ?)「TIME MACHINE」として利用された、と考えられる。
なお、「タイムマシーン」には「クソフト」という人糞を模したソフトクリームが販売されていたらしいが、これと類似した「開うんク・ソフト」という商品が清里の「清里レストラン&コテージ睦(ぼく)」という店で名物となっている。「睦」と同じ敷地にあった「のぞいてIN」という店舗が1996年頃に「ク・ソフト」という名で発売したもので、「のぞいてIN」が2012年頃に閉業した後は、「キッチンぺるーしぇ」が販売を引き継ぎ、「コテージ睦」に受け継がれたらしい(「キッチンぺるーしぇ」は店舗営業を終了しているが、キッチンカーでの営業は続けている)。1995年前後という時期も併せると、「のぞいてIN」と「タイムマシーン」には何らかの関係があった可能性がある。