シャトー三宝 概要・歴史
三宝山に聳える「古城」
シャトー三宝は高知県香南市の龍河洞スカイラインの途中にある洋風の古城。三宝山の山頂に位置する。「洋城レストラン」等と紹介されていることもある。
1973(昭和48)年4月26日に龍河洞スカイラインが開通した際、その目玉施設の一つとして開設された。スペインの古城をコピーしたデザインで、海外の古美術が展示されていたという。三宝山頂上には、シャトー三宝の他に遊覧施設「三宝スカイパーク」と食堂「三宝山スカイレスト」、展望台、300台収容の駐車場が作られた。
しかし龍河洞スカイラインは開通当初からオイルショックに見舞われ、山頂施設の魅力が今ひとつ乏しかったこともあり、経営はなかなか上向かなかった。
「JTBのポケットガイドNo.31四国」(JTB、1990年改訂13版)では、「龍河洞スカイライン三宝山頂にある18世紀のスペインの城を模したすてきな建物。闘牛関係の資料やヨーロッパの鎧・甲、食器などを展示している。入場200円、9:00~16:30、休無。隣には神殿風の三宝山スカイレストがある」とあり、まだスペイン関係の展示が主である旨が記されている。
1983(昭和58)年にNHKが、四万十川を「自然と人の共生の見本」「日本最後の清流」として放送したことから「日本の行ってみたい川No1」に選ばれた。時の竹下首相が「ふるさと創生資金」を打ち出したことや、橋本大二郎高知県知事が県庁に「四万十川振興室」を設置したこともあり、四万十川ブームが到来した。
これらの影響もあって、シャトー三宝は1993(平成5)年8月、四万十川の動植物などを紹介する「四万十の風」という四万十川の資料館に改装される。
雑誌『観光』(日本観光協会、1993年10月)には、「同施設は龍河洞スカイラインシャトー三宝に完成し、四万十の自然と、四万十の川魚と暮らしの2つに分かれて展示されている。館内には水辺の植物などを写した約180点の写真が展示され、20台の映像モニターでは、川魚の様子や風景、流域市町村の紹介などが上映される」と紹介されている。料金は中学生以上200円だった。
『観光ガイド四国秋冬号vol.10』(四国総合情報センター、1994年)には「ピア・三宝」として掲載され、「古城の正体は『シャトー三宝・四万十の風』」「三宝スカイパークや三宝スカイレストも楽しめます」とあり、一連の施設全体で「ピア・三宝」の呼称が用いられていたことがわかる。
『マップルマガジン四国』(昭文社、1997年1月)では、「三宝山スカイパーク」として地図に記されているほか、「龍河洞スカイライン」の説明に「三宝山上に遊園地やレストランがある」と名前を挙げずに言及されている。また、龍河洞スカイラインの写真に「シャトー三宝」が写っている。
1997(平成9)年4月1日、龍河洞スカイラインは県へ譲渡され一般道路となる。同時に三宝山スカイパークが閉園する。
2000(平成12)年にはシャトー三宝が、2003(平成15)年には三宝山スカイレストがそれぞれ閉館し、シャトー三宝以外の施設はすべて取り壊された。
閉鎖されたシャトー三宝のみが山頂に聳える形となり、美麗な「古城廃墟」として知られるようになった。
2017(平成29)年に、シャトー三宝を含む三宝山の観光拠点化に向けた運営事業候補者を募集し、2018(平成30)年3月末までに「香南市三宝山観光拠点化基本計画」を策定し運営事業者を決定する旨、香南市より発表された。この中でシャトー三宝は「市のシンボル」として言及され、今後共保存していく方向が示されている。内部はラジオ局により部分的に使用されているという。
2021年4月から「創造広場アクトランド三宝山多目的広場」の造成工事が始まり、同地一帯は立入禁止となった。工事は2023年7月完了予定となっている。その後は再び広場付近は立ち入り可能となると見込まれるが、シャトー三宝建物は管理されており、内部に立ち入ることはできない。かつては付近に朽ちた石像などが見受けられたが、工事により撤去された可能性がある。
また遊覧施設「三宝スカイパーク」跡地付近に、浅間神社と竈戸神社が祀られていたが、これも現況不明である。