西湖園(伊東市) 概要・歴史
「東洋蘭センター」「東洋原始美術館」だった
西湖園は静岡県伊東市の飲食店。国道135号線沿いに位置する。
開設時期不明ながら、1970年代初頭頃と推測される。
天安門を模した中華風の2階建て建築で、一見すると高級中華料理店のようだが、少なくとも1979〜1980年時点ではランの展示施設「東洋蘭センター」、台湾の高砂族の絵画の展示施設「東洋原始美術館」およびフランス田舎料理店の複合施設だったらしい。1階と外周が植物園、2階がレストランの構成だった。
「知られざる魅力伊豆」(1980年、読売新聞社)には「一芽数百万円といわれる最高級品種をはじめ気品ある中国欄、日本春欄、寒欄の数々を展示した日本唯一の施設。天安門を模した建物もユニークだ」と紹介されている。
また「ブルーガイドパック13伊豆」(1979年、実業之日本社)には「日本唯一の東洋蘭研究センター」「台湾・高砂族の原始絵画を展示する東洋原始美術館も併設されている。共通観覧料は400円」とある。
「知られざる魅力伊豆」(1980年、読売新聞社)によると2階で営業していたレストランは「ランデブー・ドゥ・シャス(狩人の館)」で、南仏田舎料理を売りとし、「サザエのエスカルゴ風」が人気だったらしい。また西湖園の中華蘭は中国の国立蘭園から分けてもらったものらしく、天安門風の建物外観はこれに由来したとも考えられる。
1980年代後半の複数のガイドブックには西湖園の記載はまったく見られないため、この時には少なくとも「東洋蘭センター」等の施設は閉業していたらしい。
電話帳には1993年から2013年まで「西湖園」として記載があるが、2004年時点で既に不使用状態となっているのが確認されており、また「2010年頃には営業しておらず、荒れた状態だった」ことを示唆する2015年時点での言及があるため、電話帳には記載があるだけだった可能性が高い。「元は中華レストランだったが、強盗被害にあい三人が死亡した」「その後洋風庭園に改装されたが閉業」等の風説があるが、中華風の外観からの憶測に過ぎず、中華料理店だったことは一度もなく、1980年代半ば頃には閉業し、その後何らかの形で再利用されたとしても2000年までには再閉業していたと考えられる。
その後2015年までに刈払いなどが行われ、2018年時点で建物は不使用ながら比較的綺麗な状態で、機械警備が導入され管理されている。また建物前面の駐車場は現役利用されている。
背面の駐車場は放置されている様子が空中写真から確認できる。
2022年10月時点で建物は現存し、建物前方は蕎麦屋「砂場」の、建物後方は「伊豆ぐらんぱる公園」の駐車場として使用されている。
往時の西湖園見取り図によると「東洋蘭センター」は建物の裏手を回廊状に円を描く形で配置されており、かつ現在建物の裏手はぐらんぱる公園の臨時駐車場となっていることから、蘭センターだった箇所は解体されたものらしい。
正面入口の玄関の扉には「東洋蘭センター」「原始美術館」「2F フランス田舎料理レストラン」の文字が残っており、窓越しに覗う限り2階のレストランに関する看板が見られる。
建物後方の複数箇所の窓からは、受付や売店のフロア・西湖園全体のフロアマップ・「原始美術館」を覗き見ることができ、「原始美術館」は一部の展示品や説明看板がそのまま放置されている。