このところ雪中隧道を中心に松代町にスポットを当てているが、今回もまたこの町が舞台になる。松代町の東の端、かつては松代町と十日町市の境となっていた、国道253号薬師トンネル旧道、薬師峠だ。国道253号は新潟県上越市を起点としてほぼ真東に進み、松代、十日町を経て旧六日町の国道17号（291号と重複）まで延びる67.8kmの一般国道である。上越市東部や十日町市、六日町の山岳地帯・豪雪地帯を突き進む路線で、かつては長期間の冬期通行止めを余儀なくされた道でもある。現在の国道は、松代町には儀明峠を越えて入り、沿道に雪中隧道を見ながら町内を横断し、薬師トンネルを抜けて十日町へと出て行く。

薬師峠 　365ｍ （2003.10.9）　地図新潟県松代町犬伏－十日町市名ヶ山新潟県松代町犬伏から十日町市名ヶ山へ越える国道２５３号線の旧道峠である。現在国道は薬師トンネルと名ヶ山トンネルという２つの長大トンネルでこの地域を通り過ぎている。よって現国道から薬師峠へ行こうとすると、この長大トンネルの間にほんの５０ｍほど開いた地上部分から行くことになる。薬師トンネルから名ヶ山への分岐点旧道へ入ると、すぐ名ヶ山の集落がある。しかし傾斜した土地に切り開かれた狭い道を通ると集落はあっという間に終わる。そして集落外れにある別の分岐点も、峠道方向には自動車通行禁止の看板が立ててあるだけでうらぶれた感じは否定できない。分岐狭い谷は田圃として峠近くまで利用されているが、それ以外に用がなくなった道は峠を越えると、急速に自然に還る。薬師峠という名前だから石仏のひとつもあろうかと探してみても、峠には何も見つからない。もちろん境界の標識さえもないのである。薬師峠