ホテル寅福 概要・歴史
高見山山頂の廃ホテル
ホテル寅福は、広島県尾道市(旧・御調郡向島町)にあったホテル。高見山山頂、高見山スパイラルデッキの奥に位置する。「とらふく」の大きな看板が山麓からでも目を引く好立地のホテルで、絶景の露天風呂で知られた。3階建ての上に塔屋の乗ったL字型の上層建物と、斜面に柱を建て高床状に設けられた2階建ての下層建物から構成されている。
1966(昭和40)年に竣工し、1966(昭和41)年に「高見山山荘」として開業。
『写真アルバム 尾道・三原の昭和』(森重彰文 、2018年)には「高見山山荘」屋上から展望台付近のテレビ電波塔などを撮影したらしい写真があり、この中で屋上には日傘を差した女性や望遠鏡のほか、新幹線・スーパーカー型の乗り物、動物型の移動乗物が写っており、当時は屋上に簡易遊園地のような設備があったことが窺える。
1987年に地元業者から東京の住宅業者に権利が移っている。なお、この業者は同時期に近傍の高見リゾートホテルも取得している。
1988年度の観光地図には「高見山荘」ではなく「高見観光ホテル」として記載され、1992年には「スカイラウンジ高見 高見観光ホテル」となり、サンデッキ部分からの眺望を売りにしている。
1991年発行の向島観光のパンフレットでは、「高見山山荘」でも「寅福」でもない「高見観光ホテル」として紹介されており、屋上に「とらふく」の文字はなく、現在のマリンユースセンター方向の壁面に「高見観光ホテル」の大看板が設置されている。現在の階段状になった建物のうち下層部分(サンデッキ・地下階)も存在しない。
1997年度ではやはり「高見観光ホテル」だが、別の観光案内(発行年不明だが、「99年新尾道大橋完成予定」の記述があることから98年頃か)によると既に名称は「寅福」となっている。
なお、経営不振により1995年に市によって差し押さえられているが、営業自体は継続されたらしい。
2001年11月発行の「まっぷる」では「眺望抜群の露天風呂あり」との解説があり、また2001年8月にリニューアルオープンした旨が記載されている。
電話帳では2000年に「寅福」、2001年に「高見観光ホテル」の記載がある。
以上から、1966年の「高見山荘」としての開業以降、1991年までに「高見観光ホテル」となり、1997年~1998年前後に「寅福」と改称されたと考えられる。なお、正式名称は「高見山頂ホテル 寅福」らしい。
2002年にはグラビアアイドルの仲根かすみによるイメージビデオ撮影に使用されている。
2003年に閉館したとされているが、住宅地図上では2005年版まで名前が残っており、2006年版から空白となる。玄関付近に総額6000万円という金額の記載された2003(平成15)年度の固定資産税請求書が落ちていたとの言及もある。
その後荒れた状態となり、少年らが建造物侵入で逮捕され、器物損壊により多額の賠償金を請求されたと言われている。
2018年7月豪雨の影響で、高見山に至る登山道は通行止めとなり、2019年1月時点でも通行止めが解除されていなかったが、2019年6月時点では通行可能となっている。
2024年5月時点で現存し、上層建物の屋上には電波塔が設置され利用されている。上層建物は1階エントランスと2階部分に入口があり、このうち1階エントランス前に続いていた道は崩落し通行不能となり、かつて駐車場だった舗装部分も下の土砂が流出し極めて危険な状態になっている。一方、スパイラルデッキ付近から2階裏口に向かう道は問題なく通行できる。
建物は経年劣化が進んでいる上、ガラスの損壊や落書き、人的破壊などにより著しく荒らされている。また下層建物(サンデッキ)は2023年に発生した不審火により焼け落ちており、壁が損壊、窓がほとんどなくなっているだけでなく、コンクリートの床までもが部分的に抜け落ちて非常に危険である。
ドアなどが開け放たれている一方、警官による見回り等が行われている。