お水荘ヘルスピア 概要・歴史
南四国最大級の健康ランド
お水荘ヘルスピアは、徳島県海部郡美波町にあった健康ランド。国道から外れ鹿の首岬方面へと長い山道を上った先に位置する。
1971(昭和46)年に開業。「お水荘」の名称は付近にある「お水大師」に因むらしい。
『徳島年鑑 1977年版』(徳島新聞社、1977年6月)では「売りは壮大な景観もさることながらお水荘の牧場で飼育したイノブタの料理」と紹介されている。また『徳島年鑑 1979年版』(徳島新聞社、1979年6月)には「闘豚を一般公開したところ見物客が集まり、毎日曜日に開催している」「放牧場にはイノシシやイノブタなどが約300頭飼育されている」との記事が掲載されており、後のスパ施設とは大きく異なり、当初は牧場とイノブタ料理がメインの施設だったことがわかる。
元々は3階建ての本館のみだったが、1980年代半ばに温水プールが設置され、少なくとも1985年時点で「スカイガーデンお水荘」と呼称されている。
1991年10月22日に、廃タイヤ70万本が野積みされていたことで、廃棄物処理法違反で管理者が検挙されている。
1994年頃には自然光を大胆に取り入れたバーデーゾーンが新設、2つの大宴会場、ウォータースライダー付き温水プール、硫化水素ぶろ、海水浴ぶろの他、全部で17種類の湯を備える南四国最大級の健康ランド・スパリゾートとなった。
雑誌『新エネルギープラザ』(新エネルギー財団計画本部、1994年11月)には、廃タイヤ焼却処理で発生する廃熱を利用する浴場施設として、次のように紹介されている。
既存の宿泊施設・スカイガーデンお水荘東側に述べ2,500㎡を増設したもので、300人収容の大浴場、サウナ、露天風呂、多目的ホール、レストランなどを設備。隣接の25mプールを温水化したほか、暖房の熱源はすべて敷地内で焼却処理している廃タイヤの廃熱を利用している。また、熱湯を吸着式冷凍機で冷水に変えて冷房にも使っている。
『観光ガイド四国秋冬号vol.10』(四国総合情報センター、1994年)には「平成6年7月オープン、南四国一の健康増進施設」として紹介されており、「ヘルスピア」としてリニューアルされたのが1994年7月とわかる。「クアスポットは、圧注超音波風呂、バイブロマット、寝湯風呂、うたせ湯、パワーノズル、海水浴風呂、露天風呂、サウナ風呂などなんと17種類」と浴場設備が記されており、客室16室70名収容の規模となった。お水荘イチゴ園の紹介もあり、またイノブタ牧場への言及があることから、リニューアル時点でも開業当初からのイノブタ料理は続けられていたことがわかる。
営業時間は10:00~22:00、料金は大人1700円、3歳から小学生は900円だったが、営業後期には次々と値下げされ、末期には100円で利用できたとも言われている。
リニューアル時の投資がバブル崩壊後に重荷となったのか、2002年8月に自己破産し閉業。
2004年から徳島地方裁判所阿南支部により競売にかけられ2005年12月に県内事業者により落札。2006年1月に所有権が移転した後から敷地内に廃タイヤが野積みされるようになり、自然発火や便乗投棄などの危険が問題視され美波町議会で議題とされている。
その後は朽ち果てるままとなり、2012年頃には「お水荘前」のバス停が廃止された。
2013年頃に一部建物が撤去され、2015年までに道の北側の土地と共に太陽光発電設備として再開発されている。ソーラーパネルは施設屋上に設置されているため、建物そのものは2023年時点でも現存しているが、機械警備が導入され厳重に管理されている。
2018年に「お水荘ヘルスピアを復活させたい!プロジェクトが立ち上げられているが、2023年5月時点で変わらず太陽光発電設備として現役利用されている。
(※参考:『松茂町誌 続編 第2巻』(松茂町誌編さん室、2001年8月)ほか)