ホテル・シャングリ・ラ(Shangri-La) 概要・歴史
温室と化した理想郷
ホテル・シャングリ・ラ(Shangri-La)は徳島県海部郡美波町にあったホテル。
空中写真では1996~2003年に開設されている。1996年時点で大規模な造成が行われており、また残されているパンフレットに1998年開通の明石海峡大橋が描かれていることから、1998年ごろの開業と推測される。
2階建て客室全60室ほどで、公式には700名をうたっていた。1階にはロビー、フロント、ラウンジ、ゲームコーナー、更衣室、日焼けコーナー、みやげものコーナーのほか、大型の屋内プールレストランが配され、2階には客室、浴室、ジム、サウナやチャペルがあった。
ドーム型プールは300名収容、全長40m、水深は2m、1.5m、80cmがあり、ウォータースライダーが備えられているほか、熱帯植物が配されDJブースも備えていた。
レストラン宴会場からは滝が見え、水鳥を眺めながら食事を楽しむことができ、浴室は打たせ湯、ジャグジーバスを備え、テレビを見ながらくつろげるサウナ風呂があった。また別館には「蝶と楽しむ植物園」があった。
開業から10年足らずの2006年頃に閉業。
2024年4月時点で建物は現存し、外観は簡素な2階建てながら、大胆にガラス窓の配された屋内プールには植物が繁茂し、朽ちた温室のような幻想的な風景を醸している。
施設前に残された看板には「阿波おどり丼 ¥700」「会席料理 ¥3,000より」「ミートスパゲッティ ¥1,000」「レギュラーコーヒー ¥350」「ツイン 朝食含む ¥10,000」のメニューがあり、凝った設備の割に良心的な価格設定だったらしい。
またホテル入口近くに「桜観音」という石像が建てられており、この像の銘板に「平成十一年八月吉日 ホテルシャングリラ ◯一美智子」の記載がある。この人名は2022年から徳島県吉野川市の温泉宿の支配人をされている人物と同一だが、公表されている生年から計算するとわずか20歳でこの碑を建てていることになり、不自然な点も残る。
なお、「シャングリラ」とはイギリスの作家ジェームズ・ヒルトンが1933年に出版した小説『失われた地平線』に登場する理想郷の名称で、ここから転じてユートピア一般を指す言葉として使われている。